2008年11月1日土曜日

背景と華。





ついにデザイナーズウィークにはいりましたね。皆さんはもうどこかへ出かけられたのでしょうか。

僕は昨年から東京ミッドタウンで開かれる DESIGN TOUCHに参加するようにしています。

昨年の今頃 21-21DESIGN SIGHTにて行われた WATER展に連動して、

佐藤卓さんの「なぜデザインで水なのか」というカンファレンスを受けてすごく勉強になったので今年もこちらにきました。(外苑前もいいけれど、人ごみで帰ってきてからいったい何をみたのかなと思うことも多かったので、それだったら著名なデザイナーに習おうということにしました)


今年は四つほどカンファレンスの予約が取れたのですが、いろいろ急に予定が入ったりブッキングしてしまい友人にほとんど譲ってしまいました。

そのなかで、唯一いけたのが今日のデザインタッチのカンファレンスです。

「世界の名品に通じる無印良品の思想」という3時から7時30分までかかるかなり長いものでしたが、深沢直人さんの話が聞けると思い参加しました。

時間が一時間ほど余ったので今年からこちらでやるデザインタイドを見ました(こちらは後日機会があれば上げます)



まず、最初に会場に行って驚いたのが出演者のところに三名の名前が出ていたこと。


深沢直人


Konstantin Grcic


James Irvine


なんと有名なデザイナーが三人も集結していました。今回のカンファレンスの目玉だけありますね。

James Irvine、Konstantin Grcic、深沢直人さんの順にプレゼンをして、最後に三人でパネルディスカッションをして終了になりました。

James Irvineさんは、CHAIRS&CHOPSTICKS(椅子と割りばし)という、デザインが環境に適応して進化してきた歴史を紹介し、

Konstantin GrcicさんはA BICYCLE RIDE TO DESIGN(自転車に乗ってデザインの世界へ)というテーマでバウハウスから、マルセルプロイヤーがいかにカンティレバーを用いたかという話をしました。最後にKonstantin Grcicさんはこう言いました。

MUJIの美しさとはほかの製品と組み合わせたときに美しく映えるところにある、と。


最後は深沢さんが「世界の名品に通じる無印良品の思想」というテーマでプレゼンされました。
今までの二人のプレゼンテーションをうまくまとめあげるように導入していきます。

そんな中で以下のような言葉ありました。



シンプルとはスタイルのことではない。


ミニマリズムとはシンプルということではなく調和しているということである。

調和したデザインは、空気が変わる。何かいいと感じると深沢さんは言います。



それらをふまえた上で今回のエントリーのタイトルである
背景と華という話に移っていきます。



もし、今の世の中に華美なデザイン(華)があふれているのなら、MUJIはそれらを際立たせるためのの背景に徹しなければいけない。


もし、みんなが前へ前へと出たがるのならばMUJIは退かなければならない。

それらはいうなればわきまえであると言える。

今の世の中にあふれるデザインに人々がつかれたとき、華美なデザインの
対極にあるMUJIに今の人々は帰ってくるのかもしれない。


MUJIがいい
MUJIでいい



そんな風にお客さんは思っているのかもしれないと。



これはなかなかに考えさせられるお話でした。

よくMUJIはシンプルだといわれるが、それは時代が華美なデザイン、強烈なデザインを出してくる中であえて対極にいる存在がいるのではないかという考えに基づいているそうだ。

もし、この言葉どおりだとするのなら、時代がシンプルなデザインに収束するのであればきっとMUJIは挑戦的で、革新的なデザインへと移行していくのでしょう。

そんな話の中で深沢さんはいくつかのMUJIのデザインを事例にあげて説明していきます。



この空気清浄機は、ドアや部屋についている通風口のブラインド部分をメタファにしている。


MUJIが目指すのはあくまでも背景である。でも、その中にもみんながなっとくするなるほどというものがなければいけない。

普段はそのものに対して大して認識していないが、体がしっかり知っている。

慣れ親しんでいるものがデザインのソースになっている。

それがMUJIらしさである。と深沢さんは言います。




有名な深沢直人さんのMUJIの壁掛け式CDプレイヤーです。
正直いって今日まで僕はこのプロダクトがあまり理解できませんでした。
よく、これは換気扇に例えられ、一見すればただの面白商品になりかねません。

でも、パネルディスカッションの際にJames Irvineさんがこういったのです。

「このCDプレイヤーは一曲聞き終わらなくても好きなときにつけ、消すことができる」


その言葉を聞いたときに僕は感じました。

このプレイヤーは換気扇なんかではなくきっと、部屋の電気にちかいものなのだと。

そう考えることで、なんか納得してしまいます。

部屋にはいって、部屋の電気をつけるような感覚で、心理的にもシームレスに生活の中に音楽を組み込む。

それこそがこのデザインの魅力なのかもしれないと。

多分、僕がこの壁掛けCDプレイヤーのある部屋に入ったら引っ張ってしまう。

明確に使用シーンが描けることで一気にプロダクトが魅力的に思えてしまうから不思議ですね。


最後に深沢直人さんはこういってプレゼンテーションをしめました。

世界の名品はMUJIに通じる。


背景と華という話はとても面白く、プロダクトメインで考えるのではなく、ほかとの調和を考えるという思想には感じるものがありました。

すごく面白い刺激をもらった気がします。

普段、なかなか聞けないMUJIの中の話も聞けて非常に興味深い一日でした。